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本当に、ここでいいのかしら

玄関を半分ぐらい開けて顔を合わせたのは、背のひょろっと高い、眼鏡をかけた40代の男でした。「わたくし、××の者ですが」。この暑さにもめげず、真っ黒い背広を着、やたらにニコニコしています。典型的なセールスマン。私はこういう厚かましい突撃隊は好きじゃありません。「資料を送って下さいと言っただけなんですけどね。まだどことも決めたわけじゃないんです。勿論、お宅も参考のため資料が見たかっただけです」「あ、でも、すぐお近くなので持って伺った方が早いかと……」  近いと言ったって、お宅、東京の上にある県の人でしょ。 遠いでしょ。 男は、半開きのドアの向こうにある私の部屋を覗き込こんでいる様子。私は外へ出て、ぴしゃりとドアを閉めました。男は、今度はマンション全体を見回しています。ハハア、これは私の面接を兼ねて、財産の下見に来たな。いよいよ不愉快だ。「資料はいただきます。どうもわざわざありがとうございました」 そう言って、風のように素早くドアの中に入ってしまいました。こんなのがいるホームなどロクな所ではあるまい。まあ資料だけ読んでみよう。 そのときすでに、私は男の漕ぐボートに片足を突っ込んでいたのです。

資料を読んだところ、悪くはありませんでした。東京でないとは言え、入居一時金、償却期間など、どのホームより条件は良いと言えました。早速掛かってきた男の電話に誘われて、とにかく見学に行ってみました。部屋が空くたびに何度も何度も。良くもないけれど悪くもないフツー。他のホームのようにギンギラのロビーなどがないのが気に入りました。 屋根のコンクリートの隙間からペンペン草が長く延びていたり、大規模補修が15年経っているのにまだやっていないところあたりは、メンテナンスに問題がありそうで気に入らない。でも、何よりも気に入らなかったのが、例のセールスマンなのでした。



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花の下、隠れて何をする人ぞ
  
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Author:borobear
父が婚約者の母に贈ったイギリス製の熊。昔はピカピカに可愛く輝いていたのに、今や薄汚れてボロ熊に。私も老人ホームで薄汚れ。同じボロなら居直って、なりふり構わず踊らにゃそんそんという具合に、仲良く生きています。

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