スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

営業マンの手=腕 1

老人ホームを探す上で、最初に「資料を読み、『重要事項説明書』を検討する」というのは当たり前のことですから、ここでは省きます。
すると最初に来るのが言わずと知れた「ハエ取り紙」のことです。何しろ、彼らは最初から入居まで、長~い付き合いになるわけですから。そして、入ってくるホームに関する情報は彼の口から以外、ほとんどありません。一口で言ってしまえば、彼らの言葉すべてが「手」の塊りなのです。

ご存じのように、彼らにとっては客は飯の種です。脈ありと見れば、食らいついて離しません。どうやって? 客の要求をギリギリまで呑む(呑んだふりをする)のです。私の場合は化学物質過敏症ということで、要求も他の人とは変わったものが大半でした。
「部屋にいられない時はソファで横になってもいいですか」「はい」。
「工事がある時は早めに知らせて下さい。防衛の準備をしますから」「はい」
しかし、彼の「はい」はことごとく実現されませんでした。ソファに横になれば、ホーム長に「禁止」と言われ、他の場所を探しても全部鍵がかかっていて、あると思っていた(思わされていた)逃げ場所がありません。時には、真夜中に外へ出て、玄関先のポーチで地べたに横になりました。涙が出ました。彼が言った「はい」は、「ハエ」の聞き間違いだったんじゃないかしら。

皆さんは営業マンは、ホームの人だと思っていませんか。実は運営会社の営業部から来ている人です。これは他のホームもほとんどそうです。彼の役目はハエを取ることだけ。ホームという虫かごに入れれば、そこで仕事はお終い。後はホームの責任だから知~らない、っと!

私の過敏症についてはホームに過少報告をしていた節があります。多分、臭いに敏感な神経症だとでも言ったのではないでしょうか。2年も付き合い、その発症時の苦しさを何度も説明したのにもかかわらず、その一番大事なことは言わなかった。 ホームに却下されたら客を1人逃がすから。業績を上げるためにはホームにも、客にも嘘をつく(言うべきことを言わないで隠すのも嘘に入れます)、これが最悪の「ハエ取り紙」の手でした。聞けば、彼は成績トップの営業マンだったとか。私にとっての最悪は、会社にとっては最良だったのです。ヤレヤレ。

今日も「ハエ取り紙」が、入居希望者の頭の上でぶんぶん回わっていることでしょう。どうか、「ハエ」を「はい」と聞き間違えたりしませんように。 あ、もしかすると回っているのは虫取り網に変わっているかもしれませんよ。今は進歩の時代ですからねぇ。


虫とり 

何? それはハエじゃなくて蝉だって?
上等じゃねぇか。蝉の方がデケェんだよ。
次はコガネムシといきてぇもんだぜ。
コガネムシは金持ちだ~♪
スポンサーサイト

反省のつぶやき

ここまでのブログを読み返し、ふと思いました。
このブログは、内部を知らない人に、入居後に見えてくることを知らせ、入居の際の参考にしていただく「つもり」で書いたものでした。しかし-----
このブログが本当に警告になるでしょうか。ここの消防訓練がいい加減だと書いても、それは「ここ」がそうだというだけのことで、他は違うかもしれないのです。
「あたしはそこに入るんじゃないんだよ。あたしんとこのことを書いてよ」という声が聞こえるような気がします。でも、私は「あたし」がどこへ入りたいのかわからない訳で-----。

そこで、次回からは、もっと一般的な、さまざまなホームの入居者確保の「手」を少し書こうと思います。あの手この手は、千手観音ほどではありませんが、結構知られていないことがあるのです。それから、下調べの際の注意のしどころなども少し。
それらは、私が過去・現在を含めて出会った10件近くの物件から拾ったり、入居者から聞いたりした話です。ここの話だけではありませんから、少しは参考になるかと思います。騙されたと思って、騙されないための知識を持って下さい。
お詫び 

ただ一つ、これまで長いスペースを取って書いてきた、人間関係については、どのホームでも「あり得ること」と考えていいかもしれません。そして案外、入居前には考えないことだということも。人間関係は老人にとって、特に自立した人にとっては、その居心地のよさに大きく貢献するものです。老人同士の楽しいおしゃべりに花が咲くだろうと思って来られる人が、予想外に多いことも分かりました。
でも私の前に繰り広げられたのは、陰湿な蔭口の応酬。外国の経験談は「自慢話」、珍しい植物の名前を言えば「インテリ」。学歴などひた隠しにしなければならず、家族の話もできない世界です。沈黙は金。無難な話は、ここでは「お天気」と「病気の話」ぐらいでしょうか。

私が訪れた他のホームでも、かなりの確率で、その兆候は見られました。食堂にほとんど人がいない。訳を聞くと、「みなさん、お部屋へ持って行かれるんです」という答えです。みんな引きこもり。

そんな様子に出会った新入居者は、戸惑い、失望することが多いでしょう。
「こんな風だとは思っていなかった」。
エレベーター前のおばあさんの呟きが、すべてを語っているように思えました。

広がる黒雲

残念ながら胸に湧いた黒雲はどんどん広がっていきました。

そう言えば-----
風呂場の排水管が壊れて、そこからお湯が音を立ててて噴出している。「業者待ち」という説明ですが、こういう事態に業者が飛んでこないということがすでにおかしい。常日頃からの付き合いが薄いからでしょう。というのは、定期点検をしていない証拠でもあります。(入居者の中には「払いが悪いからだ」という人もいました。)とにかく、ジャージャー流れっ放しの水道の傍に、「水を大切に使いましょう」の張り紙が出ている辺りは、テレビの「ナニコレ珍百景」にでも出したいような光景です。

突然、モーターが壊れて断水する。
突然、風呂場のカランから水しか出なくなる。
廊下の天井からブーンという唸り音が鳴り響く。
排水溝の掃除は10年ぐらい前に一回やっただけ。(入居者談)
驚きました。以前住んでいたマンションでは、一年に一回やっていましたから。業者に聞くと
「3年に一回はやって欲しい」と言うことでした。
その他、モロモロ。

とにかく「ことが起こるまで」何もしない。
その手当は、「その場が収まりさえすればいい」という応急処置。根本的な直しをしないから、また同じようなことがすぐ起きる。 こういう調子で今までやってきたツケが、今、回って来ているのではないでしょうか。
毎日何かしらの工事が絶えません。

入居者の反応は、驚くほど冷静です。蔭ではジクジク文句を言っているのですが、それをじかに訴える出る人はいません。老後を人質に取られているからです。「介護室に入ってからが怖い」。介護室の中のことは入った人しか分からず、ほとんど何も漏れてこないから(風呂場と違って、ここのメンテナンスは余程良いのでしょう)真相はわかりません。でも、意地悪されるなんて-----そんなことはないでしょう。

無反応のもう一つの理由を聞いて、唖然となりました。投書箱に何を書いて入れても、その意見は誰も見ないというのです。「ちらっと見て、すぐ紙屑籠に放り込むだけよ」
「苦情係り」に言っても、ふんふんと言って聞いてはくれるけど、右の耳から左の耳に音が抜ける頭の構造らしく、聞いたことさえ覚えてない!

みんな諦めてしまっているのです。何を言っても何をしても無駄だ、と。

入居したての頃は張り切って、ここをこうすれば、ああすればと投書したり、ホーム長へ文句を言っていた私も、今では何もしなくなりました。やっとここの住民らしくなれたわけです。しかし、すでにブラックリストの天辺付近に名前が載ってしまったのは間違いありません。

28. キャラウエイ 鳥の巣箱だろうか 
アメリカ南部の植物園にあった鳥の巣箱
あの一つにひっそりと住む
私は鳥になりたい

避難訓練

ある日、「これから避難訓練をします。指示に従って行動して下さい」という声がスピーカーから流れました。その年の3月11日には大地震があり、私は元のマンションで1人ウロウロ経験をした直後でしたから、「老人ホームという所はさすがしっかりしている」と感激し、普段の不真面目な性格を捨て、真面目に参加することにしました。
「今、揺れがきました! テーブルなどの下にもぐって下さい!」
潜りました。30秒もしないうちに、
「揺れが止まりました。非常口から避難します。各階の非常口に集まって下さい」

廊下に出て5階の非常口の前に行きました。5階には10部屋あります。ご夫婦もいますから人数にすると12人です。ところが、集まったのは3人だけでした。それに、非常口には鍵がかかり、出ることができないのです。窓から、しとしと降っている雨をぼんやり眺めていましたが、みんなで「帰ろか」と言いだした時、スピーカーが言いました。「これで訓練は終わります。ありがとうございました」
その声とともに、車椅子に乗せた老人を息せき切って運んできたヘルパーさんが到着しました。彼女が鍵も持っていたのです。老人を車椅子に乗せるのに手間取ったのでしょう。みんなシレッとした顔で部屋に戻りました。「雨だったからね」という人がいましたが、雨の日は訓練としては最高の機会だったのです。あの車椅子の老人を、どうやって雨の中、階段の下まで運べたか私は見たかった。無理じゃないでしょうか。地震は、天気予報を見て「今日は雨だから行くのはやめてやろう」などと言うほど親切ではありません。今日の訓練は、どこかへ出す報告書に「訓練実施済み」と書くためにやったのでしょう。


その後、もう一度、避難訓練がありました。今回は消防車まで来る本格的なものでした。今回も非常口でもたつきましたが、それでも一同列になって狭い石の非常階段を降りました。ところが、途中で動けなくなった人がでたのです。行くも戻るもできない。それに続いて降りていた人も、誰も動けない。4階辺りの階段に団子になってもがく姿を下から見上げていたホーム長や消防署員はどう見ていたのでしょうか。やっと下にたどり着いた時、消防署が言ったのは「よくできていた」と言う意味の言葉。ホーム長は「いろいろ問題点をしっかり見ました。これで訓練を終わります」。
周囲の人たちに「はい、これでみんな死んだね。おわり!」と言って苦笑させ、さっさと帰りました。消防署も消防署なら、ホームもホームだ。双方に真面目さが全く感じられない。私には、「訓練実施済み」という文字が欲しくてやった茶番劇に見えました。

ホーム長は「問題点を見た」と言いました。もし、これが真面目な訓練なら、解決策が立てられなければなりません。それをやったかどうかは、次の訓練で分かるでしょう。私は期待していませんが。


黒雲
私の胸に、このホームに対する不信感が湧きました。
この突然の黒雲は消えるでしょうか。広がって真っ暗になるのでしょうか

「大変な人」と共に

まだここに入りたての頃のことです。
この建物は10階まであり、エレベーターは三台並んでいます。
一階でおばあさん(私もオバアサンであることを一時忘れて下さい)と一緒にエレベーターに乗りました。そういうときには、元気な人が降りるボタンを仕切ります。
「何階ですか?」   「一階」
「はあ? ここ一階ですけど」  「いいんです」
 ???
登りのボタンを押し、私は自室のある5階で降りました。
おばあさんを乗せたままエレベーターは上がっていきました。はて、何階で降りたやら。

お風呂からの行き帰りにも、エレベーターを使います。時間差で夕食に行く人と一緒になります。
私は洗面器やタオル等の道具を持って、乗っていました。
途中から乗ってきたおばあさん(別の人)が聞きます。
「入浴ですか」「ええ」
「何で?」 さあ、大変だわからない。何でと理由を聞かれても………。
「飛行機で?」 ハッとひらめきました。「そうです。そうです!」
一階で私はそそくさと降りました。「入浴」は「ニューヨーク」だったのです。どうするとそういう風にこんがらがるのかわからないけど、あちらは納得したようだからよかった。どうやら「大変な人」らしい。
「大変な人」。ここでは認知症の人をそう呼びます。勿論入居者の間だけでです。

そういうことにあまり度々出会うと、疑問がわきました。ここは完全自立が条件で入るはず。どうしてこんなに多いのだろう。
ちょっと考えれば、理由はすぐ察しが付く簡単なものでした。入居時70歳だった人が15年以上も経てば認知症になる人が出てきても不思議はありません。いずれは増える認知症、寝たきり老人。新しい入居希望者の中から介護施設の不備を指摘する声が上がると、「すぐ介護棟を建てる準備ができています」という説明があったとか。早く落ち着ける部屋に入れてあげてください、可哀そうです、と私は言いたい。介護棟ができる様子はありません。

また、老人ホームに入居した途端、認知症になったという話は実によく聞きます。老人は変化に弱いのです。順応性がないのです。その上、今までやっていた簡単な家事まで取り上げられてしまう。「ご自分で腕を奮って食事の支度ができるよう、キッチンもあります」と説明書きに書いてあっても、見ればたった一口の電気コンロに小さな流し。料理を作らせずに食堂で食べさせるのが狙いだとすぐわかります。こんな所で腕を振るったら、あちこちにぶっつけて骨折するわい! 

可哀そうなのは、それらの老人だけではありません。彼らと一緒に生活し、その様子を四六時中目にしていなければならない自立者も、実は「大変」なのです。自分の将来の姿が目の前に突きつけられている。ここで、私は「未来」という文字と「希望」という文字を失いました。時に何か始めようかと奮起しても、どうせ私もああなるんだ、それももうすぐ、と思うとやる気はサーッと引いていき、何をする気もなくなってしまう。

数カ月の内に痩せこけて、誰だかわからないような容貌になっていく人、わけのわからないことを言い出す人、そういう人たちを見るたびに食卓の一同も目を見張ります。
「あんなに急に変わるものかねぇ」
そして、口をそろえて言うのです。 「ああ、早く死にたいねぇ」

でも、ご心配なくね。その言葉のすぐ後に、どこそこのホウレンソウは放射能があるから買わない方がいいよ。うん、うん、気をつけようね。
みんな本当は生きたいのです。死ぬまで頭もしっかり、体もしっかりの状態で死にたいのです。



階段
人生の階段は上が見えないほど長い
まだ上に続きがあるんでしょうか
私としては、ない方がいいのですが

伝言ごっこ

ある朝、誰かに「ボロベアさん、Kさんと仲良しなんだって?」と聞かれました。

「ええ。でも2、3度お話しした程度ですよ」

「あら、嘘! この前、手つないで歩いてたって聞いたわよ」

あら、嘘! 驚きました。どうするとそんな話が出てくるんだろう。

Kさんはスラリと背が高く、背筋をピンと伸ばして歩く姿は宝塚の男役のよう。ハキハキ物を言う人です。相性のいい人は、最初の出会いの時にピンと感じるものだとよく言いますが、ちょっとした会話から、お互い相性の良さを感じた後、出会うたび(「すれ違う度」という意味です)に「元気?」「ヘルペスが痛いのよ」「じゃ、いい薬知ってるから教える」程度の会話があっても不思議じゃないでしょう。それが「手をつないで歩く仲」なんだから、もう!

そういえば、私が喜んで聞いていた牢名主の話は、大抵この手の噂話だということに今更のように気が付きました。「こうなんだってさ」が実に多いのです。伝聞です。同じ話の内容が毎日のようにコロコロ変わります。一つのことでも、聞かせてくれた人が違うとどっちが本当か分からなくなる。仕方がないから自分で考え、我が道を別の人に知らせるということで中身が変わっていくのです。

 

「ベアとKが手をつないでいた」は、誰かが私とKさんが親しげに話しているのを見た、から始まって、どんどんエスカレートしていき、最期にああなったのでしょう。

伝言ゲーム。人から人へ次々に耳打ちされてきた話は、最期の人が聞いた時には最初の人の話とまるで違うものになっていた。

これだったのです、よそよそしさの原因は。 話の種にされるのが怖い! だから人のことは話しても、自分のことは話さない。牢名主とサンボママでさえお互いの電話番号も知りません。自分の部屋に人を入れない、別の階の廊下を歩くことさえしません。「どうして5階の人が6階にいるの? 誰の所へ行くんだろう」これだけで、話は出来上がるのです。別にホームが作った規則ではありません。自然発生的にこうなったのです。


私は恐怖を感じました。この食卓の3人も私が話したことを触れまわっているのだろうか。姑は、いつも「私は人の話は他ではしゃべらないから」と気取っているけど、噂話に耳を傾ける熱心さは同じです。

 そこで、私はその信頼度を試す意地悪をしかけました。姑だけに、「私には本当は息子がいるの」と囁いたのです。すると、その晩、お風呂へ入った途端、「泳げば」の人に聞かれました。
「あんた、子供がいるんだって?」

Kさんに廊下ですれ違いざま、「リンゴ食べる?」と聞かれました。「食べる食べる!」

「じゃ、6階のエレベーター前の椅子で待ってて。持って行くから」

リンゴ一つ渡すのに、この気の遣いよう。人にものをあげるのも特別行為なのです。

その3日後、Kさんは忽然とこのホームから消えました。退去したのです。あのときには、もう荷造りも済んでいたでしょうに、一言の「さよなら」も言わずに。 どこへ移るのか人に知られないためには、誰にも話してはならぬ。私も信用のおけない1人の入居者でしかなかったのでしようか。悲し過ぎます。だから、あのリンゴは、無言の「さよなら」だったのだと無理に信じています。


80歳も後半と見える新入居者のおばあさんが、1人エレベーター前に座っています。エレベーターが来ても乗りません。ただ、その細い体を縮めているだけ。

「どなたか待ってらっしゃるの?」

「いえ、誰かお話できそうな人に会えるかと思って」

私は、その隣に座って言いました。

「寂しいですねぇ」
「ええ」と彼女。それから呟くように続けました。「こんな風だと思わなかった……」 
 


  噂話

プロフィール

borobear

Author:borobear
父が婚約者の母に贈ったイギリス製の熊。昔はピカピカに可愛く輝いていたのに、今や薄汚れてボロ熊に。私も老人ホームで薄汚れ。同じボロなら居直って、なりふり構わず踊らにゃそんそんという具合に、仲良く生きています。

最新記事
カテゴリ
お知らせ
訳あって、今までコメントの受付をお断りしてきましたが、今後は「非公開コメント」に限り拝見させていただくことにしました。コメントの入力欄の「管理者だけに表示を許可する」にチェックを入れてください。よろしくお願いいたします。
検索フォーム
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。